もそり、と白いシーツが動き、中からひょこりと金色の頭が顔を覗かせた。その隣には薄い茶色をした頭が並んでおり、金色の頭を眺めている。二人とも一糸纏わぬ姿であった。
 金の頭が、唸る。

「…そんなに見んなよ。穴があくだろうが」

 じとり、睨みつければ茶の頭はクックッと喉の奥で笑う。

「あきませんよ、心配しなくても。それにいいじゃないですか、見つめるぐらい。先ほどまではあなたの全てをこの目で…」
「あーあーもうわかったよこのアホ!ったく最悪お前…もういい年のくせにばこばこやりやがって…盛んな青少年かっつーんだよ」
「おやピオニー、はしたないですねぇその即物的な言い方は」
「今更俺とお前との間にどんな恥じらいを期待してるんだお前は…あーだりー」

 ごろり、とあおむけになったピオニーは、それでもシーツから下半身をはみ出すことがなかった。恥じらいなど期待するなと言いながらも情事の後はある程度気をつけているらしい。あるいは情事の後がはっきりと残っているのを晒すのがはばかられるのかもしれない。普通の日の朝ならば服が肩からずりおちそうでも、寝間着の裾がいくら捲れあがっていようとも気にしないのがピオニーという男だからである。
 ピオニーはのそりと体を起こした。その動作が幾分か鈍いのは、先ほど本人が言ったとおり少し前の出来事にて節々が痛むからだろう。

「あー…シャワーでも浴びようかな…」
「お手伝いいたしましょうか?」
「結構だ」
「そう言わずに」

 恥じらいなどないのでしょう、とくつくつと笑ってみせる男にピオニーは投げやりな視線を送る。頭の中では相変わらず揚げ足取りのうまい男だと褒めたくもあり貶したくもあった。

「…いいや、お前が先に浴びてこい。俺は後から浴びる」
「後というのは私が入っている最中ですか?」
「はぁ?なんだ、今日のお前はひどく気味が悪い…というかキモいな…」

 蒼の瞳が再びじとりとジェイドを睨みつけた。宝石のような輝きを秘めた美しい瞳だ、とジェイドも目を細める。そんなことは決して常時には口に出したりしないが、思うだけならば自由だろうということにしておく。

「それはお言葉ですね、ピオニー。私は貴方を思って…」
「そういう!台詞が気持ち悪いってんだよ、今日のお前!あーもうさっさと行ってこい!」

 びしりとジェイドに向って指を突き刺したピオニーは、その後ばさりとシーツを奪い取り抱き込むようにくるまると、ジェイドに背中を向けた。やれやれ怒らせてしまいましたか、とまるで困っていないようにつぶやいたジェイドは、とりあえず寝台から立ち上がった。

「ピオニー」

 一度、呼びかける。ピオニーの反応はない。意外に意地っ張りな男だ、今日の会話はこれで終了にされたのかもしれない。からかうのはこれぐらいにしておきましょうか、とジェイドは肩をすくめた。なんとなく今日はそんな気分であったのだ。
 あぁしかしこのまま帰ってしまうのも味気ないなと思ったジェイドは、閉じられている瞳をもう一度見たくて、機嫌を取るように優しくピオニー、と呼びかけた。
 瞳は一度だけちらりとジェイドを捉えじとりと睨みつけた後、またすぐに閉じられてしまった。反応はないかもしれないと思っていたジェイドは、律儀なことですねぇ、と嬉しそうに笑った。



閉じられた瞳


もう少し陛下に興味なさそうでいて大切に思っているジェイドが書きたいです。
とりあえずいまいち何が書きたかったのかわかりません。一瞬ではあるけれど一応呼びかけには答えてくれる陛下、ですか。