始まりを告げたのはサマイクルでもオキクルミでもどちらでもなかった。
 なし崩しに、と言ったらふしだらな関係だと一喝されてしまいそうなものであるが、今思えばそれが一番似合う言葉ではないか。あの時はきっと二人ともどうかしていたのだ。
 告げることが始まりというならば、二人は何も始まっていないのかもしれない。
 ただ、互いを求めあったのは事実だ。
 こういった関係は、はい始めましょう、などと言って始めるものではないと思っていたし、それ以前に二人とも想いを伝えあうような律儀な性格をしていなかった。
 だから体を重ねてからもしばらく、いつもと変わらない生活を続けていた。
 何も変わっていないなら、何も変わる必要はない。ただ、時折触れる指先から感じる熱が、多少熱く感じられるようになったのはその頃からだろう。戯れに、力比べに互いに触れ合うことはそれまでに幾度かあったが、それとはまた違った指先の動きがさらに拍車をかけているのかもしれない、とサマイクルは思うようになった。
 いつからこんな劣情を互いに抱き始めていたのかはわからない。あるいは、未だに抱いてさえいないのかもしれない。それでもオキクルミは求め、サマイクルは受け入れる。おとなしく、というわけにはいかなかったが、受け入れることに慣れ始めている。
 やはり始まっていたのか、何か知らないものが、知らない内に。
 あぁしかし始まっていたのだとしても、その二人の秘めたる関係が始まったのはいつだったのだろうと、何度問うても思い出せないサマイクルは一人首をひねっていた。


(もう一人はおそらくまったく気にしていないのであろうに)





首をひねる動作が大好きなのです。