「ウッドロウさん、好きです!あの、知り合いとか仲間としてとかじゃなくて、…えと、その…好きなんです!」 顔を真っ赤にして、緊張しているのか視線を泳がせながらスタンにそう告げられたのは、突然だった。 正直に言うと驚いている。 スタンに、同性に告白されたことに、ではない。スタンが自分と同じ気持ちを抱いていた事に、だ。この普通でない想いが実る言などないと重々承知していたのだから。 だから、驚いていた。同時に、喜んでいた。 だというのに、どうして己はすぐに手を差し伸べなかったのだろう。 多分、恐れたのだ。 「…スタン君、それは…」 それは本当なのだろうか、あるいは勘違いなのだろうか。勘違いであったのなら、早めに目を覚まさせる方がいい。憧れと、恋とを混ぜてしまっているのならば。 そういう意味で口にした言葉は、それこそスタンに勘違いされたようだ。 「すっ…すいません!気持ち悪いですよね、こんな…」 「あ、いや」 そうではないのだけれど、と続けようとしたがすでに望みはないと諦めてしまっているのか、スタンはいやに早口で言葉をつむぐ。 「いい、いいんですウッドロウさん、ただ俺が伝えたかっただけで…もう忘れてください!」 「いや、だから私は」 「時間取らせてすいませんでした!!」 ぺこり、もしくはぐわんとでも音がしそうな程勢いよく頭を下げたスタンは、もうウッドロウの言葉を聞くつもりがないのだろう。 わからなくもない、このまま言葉を続け、気持ち悪いとでも言われてしまっては立ち直るのに時間を要する。それが勘違いでなく、本当に好きであったなら。だったら傷つかない内に引いてしまったほうがいい。ウッドロウがスタンの立場であったらそう考えるかもしれない。 だがそれを許す程、ウッドロウが抱く想いも弱くないのだ。 「スタン君、待ってくれ!」 先ほどは差し伸ばせなかった手を今度は持ち上げた。引き止めるために伸ばした手は、スタンの左手を掴む。その触れあった手からスタンの熱と鼓動が伝わってきて、はっとした。それが、己のものと同じような熱さと速さである事に気が付いて。 あぁやはり、そうだ。 確信を抱いて、不審そうにこちらを見ているスタンに。 「スタン君…私も、君が好き、だよ」 「!!」 一言一言、はっきりと告げると、今にも泣き出しそうだったスタンの表情がぐにゃりと歪んだ。困惑、あるいは期待、聞き間違いではないかという不安。その他、色々と。 だがウッドロウはスタンに泣いて欲しいわけではない。 「嘘でも勘違いでもなくて、君の事が好きなんだスタン君」 「…あ、の」 「だから、えっと…待ってくれる、かな?」 逃げ出したりせずに、と言外に意味を込めて囁けば、しばらく固まっていたスタンが次の瞬間、大きな声で、そして嬉しそうに「はい!」と叫んだ。 |